「コントラバスを始めたきっかけは何ですか?」
まあ、コントラバスを始めたきっかけについて質問を受ける人は少ないかもしれないが(笑)、例えば「サッカーを始めたきっかけ」とか「今の仕事に就いたきっかけ」とか「ワイン好きになったきっかけ」とか。何かの『きっかけ』について質問を受ける事は誰にもあると思う。
そんなときあなたならどう答えますか?
私は趣味でコントラバスを弾いている。時々、人から「コントラバスを始めたきっかけは何ですか?」という質問を受けるのだが、これに対する私の返答は必ずしも毎回同じではない。とりあえずは「学生時代に部活でやってて…」と答える。そこで話が終わる場合も多いがさらに会話が続いた場合には続きの部分が変わってくる。
決して、嘘をついたり話をはぐらかしたりしているわけではない。自分の好きな楽器についての話だから、真面目に話している。記憶があやふやなわけでもない(まだそこまでボケてないと思う(^^;;)。
ただ、若く未熟な頃には思いが至らなかった事柄に気付いたり、当事者の立場を離れ客観視できるようになって見えてくるものもあったり、という事があり、それによって話すべき内容は随時アップデートされる。時間をかけて真面目に考えているから、話の内容も自分の思考の深まりにつれて変化するのである。
このような「話の内容の変化」は、大概「話が長くなる」という形で現れる。年寄りの話が長くなりがちなのは「きちんと説明したい」という誠実さの暴走かもな、などとも思う今日この頃(笑)。
とは言え、長話で時間を無駄にできるほど私も暇ではない。会話の相手を長話に付き合わせるのも申し訳ない。
つまり、実際の会話では話を端折らなければならないのだが、では話のどこを端折るか。
それは話の相手によって変わる。
もう一歩踏み込んで言えば、同じ相手に対してでもその時その時の会話の流れによって変わる。
「自分語り」じゃない。「会話」なんである。会話であれば、相手の出方によって自分の言葉の選び方も変わるのが自然な流れだろう。先程あげた『気付き』の問題にしても、会話の中で、相手の言葉によって、新たな気付きを得る事もある。
だから、話すたびに言う事が変わるのである。嘘でも出まかせでもなく、誠実に話をしようとした結果、そうなってしまう。